ぶよ

西表の山中で夜中うろうろしていたら、ブヨにやられた。
左の手のひらが6カ所、腕が4カ所、右の腕が7カ所、首が1カ所。それぞれ固いしこりになって、掻くと皮膚が破れ膿みや血が出る。弱い人は一カ所食われても手のひらや腕がパンパンに晴れ上がるし、まぶたをやられるとそれこそお岩さんのようになる。まあ、幸いにして私は数ヶ月続くしこりが出来るだけだ。
 ブヨは、西表だけでなく、本土にも普通だ。しかし、私は本土ではやられたことが無い。(同行者がぼろぼろにやられることは何度もあったが、私は無事だった)
 このブヨ、大体朝夕の薄明時に多い。西表でも、以前、昼から夜まで山で粘ったときには44カ所食われたことがあり、最悪だった。その時の経験から、夕方行かなければ大丈夫と思っていたが違った。夜、真っ暗になってからでもダメなのだ。ということが、やっと分かった。
 ところでブヨにやられる環境は大体決まっている。そこはお目当ての樹上性のアイフィンガーガエルの居る場所でもある。まあ、それなら仕方ない。あきらめて受け入れるしか無い。自然が人間を癒すなんて、所詮、自然を知らない都会人の戯言だ。
 昼もかゆいが、お酒を飲むとますますかゆくなる。西表が私を呼んでいるのだ。あと数ヶ月は、この強烈なかゆみが、私を西表の記憶に誘ってくれるだろう。つらいが、嬉しいことではないか(やせ我慢。やせてませんが)