恐竜

RANA_sp2006-08-16

もう一ヶ月くらい前になるが、NHKがまた馬鹿な恐竜番組を流した。
以前、被子植物の台頭が恐竜の絶滅を招いたと言う何の検証も無い仮説を流し、科学朝日にこてんぱんに叩かれたのに、良い度胸だ。日本のジャーナリズムなんてこの程度とよくわかる。
 珍説のその一は、当時は二酸化炭素が多かったか温暖化していたかで、植物の窒素の構成比が低くなるか高くなるかしていて、それが原因で恐竜が巨大化したのだと言う。記憶がいい加減なのは、それがどっちだろうと、そんなことは巨大化と何の関係もないからだ。
 そもそも巨大化って言うが、何に比べてか?今の現生哺乳類の大きさってなんだ?ゾウの大きさか?シカか?ウサギか?
つまりどの時代にも大きい動物も小さい動物もいたってことだ。
 もし、植物の成分が問題なら、「大きな恐竜」だけが生き残り、「小さな恐竜」や「哺乳類」は滅び去っていなければ行けなかった。しかし、そんなことはない。その時代にも大きな恐竜も小さな恐竜もいた。植物の成分なんかで大きさが決まるはずが無いのだ。
 恐竜の(哺乳類も)大きさは二つのことで決まる。進化系統的な制約で体を巨大化する基本的なデザインがあるかないか。それと、巨大化することが生態的に有利であるかどうか。
 前者のことを考えよう。昆虫は、過去最大で70cmくらいだった。多分5mの昆虫は出来ない。体を支えるシステム、呼吸をするシステムが不十分なのだ。哺乳類はたしか頭までのたかさが9mくらいのサイが昔いた。それが陸上では限界だった。哺乳類は呼吸を肺だけに頼っている。恐竜は鳥と同じく、肺の他に体の隅々まで直接空気を運ぶ気嚢があり、骨も軽く出来ており、歯は何度も生え変わり、頭骨は穴だらけで軽い。体の作りが大型生物向きで、哺乳類に比べていろいろ利点があるのだ。しかし、恐竜が出来なかったことがある。恐竜は気嚢を有するがために体を軽くし、熱交換でも有利だったが、体が軽すぎてうまく潜れない。恐竜は海に進出できなかった。知られている限り、最もよく海に進出した恐竜は現生のペンギン類である。この点、哺乳類は海向きに重く出来ていて、シロナガスクジラは史上最大の動物となることが出来た。それは知られている最大の恐竜の2倍近い体重である。
 巨大化の利点の後者についていうなら、巨大化するとどんな有利さがあるか。現生のゾウを考えよう。ゾウにはほとんど天敵がいない。現生最大の捕食動物はライオンやトラであり、一対一ならゾウに適わない。ゾウは餌不足にならない限り増えることが出来る。これが利点だ。同じことが過去にも言える。超巨大草食恐竜(竜脚類)のいた時代には、カルカロドントサウルスとか、アクロカントサウルスと言う、巨大肉食恐竜がいた。後の時代のティラノサウルスと同じくらいの大きさである。しかし、巨大な竜脚類はそれらをその長大な尾で叩きのめし、前肢にある巨大な爪で叩きつぶすことができた。巨大な捕食恐竜に対する有利さが巨大恐竜の生態的な有利さであろう。
 なんてことはちょっと考えれば分かりそうなのに。NHKはいったいどうなっているのだろうか。