図鑑写真

RANA_sp2008-01-23

ネイチャー写真で有名な田中さんの日記で絶賛されていた尾園さんの「沖縄のトンボ図鑑」が来た。
これを見ても、多分普通の写真の人は、何が凄いのか、まず分からないのではないかと思う。私も、どこまで理解しているのか、自信が無い。
でも、次の二点は思う。
1)凄い希少種もしれっと写真が上がっている。
2)空中を飛んでいるトンボが、まるで止まっている様に写っている。中には、流し撮りでなおかつトンボが止まっている様に見える写真もある。

図鑑である以上、どんな写真といえども、それなりに特徴が見えなければいけない。それをクリアした上での、生態写真であり、奇麗な写真なのだ。その両立はかなり難しい課題だと思うが、あっさりとクリアしている。さすがだと思う。

図鑑と言えば、遥か昔、まだ学生だった頃、日本で最初の両生類、爬虫類のカラー写真による図鑑を作ろうと、何人かで集まって、カラー写真の無かった希少種を探して全国を放浪していたことが合った。その結果、”千石正一(1979)「原色両生・爬虫類」家の光社”が生まれたが、この本、発行部数が少ない上に絶版になって久しいので、もういかなる手段でも入手は難しい。当時、図鑑の写真は、絞り11以上、ストロボを使って体の主要な特徴が写る様に、と言われて写していた。そのころの写し方の名残を、ゴミゼロの写真展では見ていただいたかと思う。

今日の写真はそのとき、日本で最初にカラー写真で撮影されたアベサンショウウオ。今でも絶滅危惧I類の希少種だ。まったくへたくそな写真だが、アベサンショウウオはしばらくの間、この時に写した写真しかなかったので、いろいろな図鑑に使われた。この写真もその時のものだが、特徴があまり写っていないので、今迄図鑑に使われたことの無かった一枚だ。

しかし、図鑑写真は個人的にはもう写そうと思わない。自分がその生き物と関わって感じたことが写真になるのが一番写したくって、特徴が写っているかどうか、名前が分かるかどうかもあまり関係が無くなっている。そういうわけで、最近チョウチョを写す時は、意識的に開放で写して特徴を消す方向で写している。図鑑写真からの脱却というのは、個人的に非常に重要なテーマだ。

で、冒頭の田中さんの写真は、図鑑写真でない所で素晴らしい写真であって、その情緒的な美しさに感嘆してしまう。これからもそういう写真を見せていただきたいと思うが、独立するなら別で、図鑑写真は必須かも・・・