90mmマクロ他

写真の師匠と勝手に思わせて頂いている安孫子師範が、オリンパスズイコー90mmマクロという、銀塩時代の名レンズを手に入れて、素晴らしい写真を撮っている。レンズはカリカリだけが能では無いという、そのボケ味の美しさ。私も、昔のあこがれレンズであるから、いいなーと思ってしまう。
しかし、ここではこのレンズの問題点も上げよう。まず第一にそのあまりに薄い焦点範囲である。90mmでF2.0では、もう被写界深度は0.5mmもない。そこではデテールが失われ、とけた色彩のミックスと、あやうく浮かび上がるピントのあった焦点面である。これは被写体の意味性を否定した写真だ。そんな写真が撮れるのか?それとも意味性を失う寸前でとどめ、逆に意味性を浮かび上がらせるか?なかなか 難しい。
もう一つの欠点は、もっと即物的だ。35mm換算の180mmという焦点距離は蝶など被写体に近づくのを簡単にする。そのため、二つの問題が生じる。第一は、バックがぼけぼけになる。つまり、どこでとっても同じような写真になりがちである。ネコは広角で背景を絡めるのではなかったか。蝶や花も同じ事だ。もう一つは、その広角が使えなくなること。つまり、長玉で安易に写す癖がつくと、蝶に近づく技術が失われてしまうことである。大体、焦点距離が半分になると、写せるチャンスも半分になる。90mmマクロは50mmマクロの2倍チャンスがあり、35mmマクロは半分くらいしかチャンスがない。14mmではさらにその半分、8mmではさらにその半分しかないだろう。この少ないチャンスを少しでも増やすため、蝶を脅さずにじり寄ったり、待ったりする技術がいるが、それが90mmマクロでは身に付かないかもしれない。やはり広角接写で腕を磨くのが良い。