小笠原の猫

RANA_sp2006-12-17

今日はゴミゼロのミニオフ&忘年会ではあったのだが、小笠原の猫に関する講演会があり、私も陰ながら応援していることもあって、そちらに参加した。
小笠原のある島では、羽を広げると1.5mもある大型の海鳥のカツオドリや、ミズナドリのコロニー(集団営巣)があったが、この数年、多数の死体が見つかるだけで、まったく繁殖していないという。その原因が野生化した家猫であった。野生化した、というのは文字通りで、生まれて以来一度も人間と接触したことの無い猫。
このままでは海鳥が全滅するという状況で緊急に猫の捕獲が必要になった。問題は捕獲した猫をどうするか?
思い悩んだ担当者は、東京都獣医師会に、猫の安楽死を相談した。そこで、獣医師から、「鳥のためにも、猫のためにもなる解決策を探ろう」といわれる。獣医は切羽詰まった状況を理解し、自らが頑張ることとした。つまり、獣医の有志が、捕獲された野生化猫を引き取ることとしたのだ。
捕獲された個体の第一号は、キジネコで、1.5mもあるカツオドリの成長を殺しているシーンが撮影された個体だ。トラップの檻でも人間を見ると飛びかかり、トラップが1mも飛び跳ねた、激突で鼻血を出している写真が残っている。
この、まるで山猫のような猫を獣医の先生はわずか一年で順化した。今ではデブデブに太り、まるで猫漫画のヒデヨシのように(あるいは猫の恩返しの猫のように)なって幸せに暮らしている。
こうして、10数頭の猫が捕獲され、多くの有志の獣医の元で、凶暴な野生化猫からおとなしい家猫に変身している。
始めはそんな大変なことをしなくても処分すればいい、という意見の人もいたが、「ではだれが殺すのか。あなたがこれから毎日毎日猫を殺すのか。そんな仕事をしたい人がこの島にいるのか」という問いに答える人はいなかった。
都会と違い、島では分業があまり無い。猫はどこか見えないところで知らない人によって処分されるのではない。そのことが無責任な議論を封じる。
こうして、小笠原では自然保護と動物愛護の両立、人と自然の両立がはかられている。ご講演を伺うと、島の人と、獣医が、お互いに相手に刺激され、さらにより良い方向を模索している用に見える。
ちなみに、小笠原は日本で最初のネコ条例を10年以上前に制定した地域である。
今回、九州でツシマヤマネコイリオモテヤマネコヤンバルクイナの保護をしている九州獣医師会の方がご講演されていたが、これらの場所でネコ条例が作られたのは、小笠原のネコ条例があったからだという。例えば竹富村は日本で二番目にネコ条例の作られた島だという。そして、九州の活発な保護活動がさらに小笠原に飛び、小笠原での対策に拍車がかかっている。まさに善意のスパイラルと言う感じで、非常にほのぼのとした気分になった。
もっとも、すべてが完全でないこともしっかり、議論された。例えば、ヤンバルのネコはすべて捕獲後飼育され貰い手を探されているが、マングースは処分されている。マングースはネコのようには慣れず、人畜共通感染症も多い。噛まれれば非常にリスクが高い。処分に反対する人も、そういう動物を、あなたや、子供や、奥さんが飼えますか?という問いには答えられないという。つまり、この問題は答えが無い。答えが無く、問題が残っていることを認識することも大事だと言う。しかし、問題が解決する方法を見いだす時間がないことを理解することも重要だと言う。ヤンバルクイナは、マングースとネコの影響でこのままのペースで減少すれば、あと10年で絶滅する。「絶滅してから、「あの時代には私はいなかったので力になれなかった」という言い訳を言えますか」というのがヤンバルのネコの保護とヤンバルクイナの保護をボランティアで行っている獣医の言葉だ。
重たい言葉だった。

昼間がちっと重たかったので、夜はゴミゼロの宴会ではじけた。これもまた、必要なことだ。

写真のネコちゃんは話とは関係がありません